彼のここ二作は特に好きな作品だったが、今回のように監督自身が全面に出るとどうも彼の体臭がきつく臭うようで、それが鼻に付く。でも、それは悪いというのではなく、彼の作品の中では好きな方ではないといった程度のものだ。
　夜、突然の訪問者、服を着て位置について司令を待て、ということだ。いったい何のことだか分からないが何かの組織の行動のようだ。とすると、彼もその一員なわけで、霧の夜に何が起こったというのだろうか。本当は分かっていなくてはいけない彼がどうして良いか分からない状態なので、見ている私もどうにも落ち着かない。それは映画の主人公である彼だけが不明なだけではなく、映画の行方までもはっきりしないまま、出演者ばかりがたくさん出てきて、うろうろしている印象に終始している。そのうち申し訳の無いことにどうも寝てしまったようで、気が付いたら終わっていた。だから、私のこの映画に付いての印象は映画側から見れば割り引いてみてもまちがいではないのだが、また眠らせてしまうようにつまらないものであったと、強引に言えないこともない。つまりは、もう一度しっかり見て、とは思うもののきっと見ないだろう。
　ウディ・アレンが出るとなぜ良くないかというと、彼がコンプレックスの裏返しのように、さんざん自分を戯画化し、ちゃかしてしまうことにあり、そんなにまでしないでいいのである。だが、物語の作り手としての腕は確かなものがあるのだから、それに徹すれば良いのにと思う。薬味としてはとても良い味を出すのも又確かだから、ちょっとだけでれば良いということになる。もっともこれはあくまでも私の好みだけで言っていることで、逆に彼が出ないと面白くないという人もいるだろう。
　夜、霧、と来るとロンドンかな、映像から見ると、ドイツッぽいし、出てくる人はアメリカ人ッぽいし、どこだか特定できない所の話。それはまあいいとしよう。雰囲気だけは情緒たっぷりで、実がともなわないようで、狙いは分からないでもないが、そこから発見出来るものは何もなかったといわざるを得ない。