美しき諍い女(La Belle noiseuse)1991
監督 ジャック・リヴェット
出演 ミシェル・ピッコリ、ジェーン・バーキン、エマニュエル・ベアール

 3時間57分という長さに怖じけずいて、見るのがためらわれた。
 さて、見て、どうだったか。簡単に言えば、映画の長さは絵描きの苛立ちを表すため必要な時間であった。あーでもない、こーでもないとモデルのポーズを変えたり、描き直したりする、絵描きの苦悩が出ている。
 ただ、映画としての、絵の美しさがない。きっとそこに気を使っていないのだろう、映画館がひどかったのかもしれないが、どうもフィルムに焼き付けられた絵自体が綺麗ではないようだ。これはひどいことで、監督は何を考えているのだろう。絵を描くという行為は、描かれる対象にどれだけ近づけるか、に掛かってくる、だから、静物にしても、人物にしてもそれこそ目を皿のようにして見つめ、そこにあるものから発するオーラを感じ、それを自分という人間を通して白い紙に写し取って行く作業が、絵を描くということだと、理解している。なのに、それと相通じるところのある映画がこんなにも汚かったら、救いがない。 エマニュエル・ベアールって、もっと綺麗なはずなのに残念だ。
 精根込めて描いた絵を、なぜか、壁に隠してしまう。私が想像するに、出来上がりに十分満足したから、そうしたのだと思うけれど、絵を描くという作業は見せるためのもののはず、それを永久に隠してしまう、というのが、理解出来ない。実際に絵を見たのは、自分自身と、モデルと娘の三人で、どういうわけか、元モデルであった妻には見せなかった(彼女は実際には見たが)。
 どんな出来上がりであるかは気にかかることだ。なにしろ4時間弱もこの映画につきあったのだから。


 
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