自分の恋心を相手が分かっていると思っていて、あえて告白していない。時が来ればまとまるものと思っている。ここに落とし穴がある。主人公は男で、相手の女性は捨て子だった。だから、兄妹のように育てられたので、彼女はあくまでも妹として接している。もともとは他人だったのだから、恋愛はもちろん、結婚の対象になりうる相手であるのに。
　はたからみても、当人同士でもそういう事実は認識していただろう。だけど、二人をとりまく環境というか、毎日の生活ではまるで兄妹、それ以上には発展するのがおかしいくらいな感じだった。 そんな間柄であっても、言わなければ伝わらない。まして結婚となると、いわく言いがたい特別な感情が入り込むものだから、はっきりと告白しなければならない第一番のことがらだと思う。きっと分かっているはず、なんてことがないことがらなのだ。兄妹としての愛情が結婚する相手としての愛情に変化するには、生活の変化とかとにかく今までの二人の環境からは生まれないものだ、ということを認識していなかった兄が浅はかな点があったということ。
　男女の愛情がどこでどのような形で作られるかは分からないし、いったんそれが形成されてしまったら、それからこちらへと方向転換させることは難しい。
　つまり、後の祭りということなのです。それでもなお負け惜しみではないけれど、二人に幸せになってね、と引き下がるのだが、きっと諦め切れないことだろうと察する。