主人公である女実業家は、強い意志と精神を持ち、家庭においてもその姿勢は崩すことはなかった。だが、彼女に最大の危機が訪れる。こともあろうに、それは内部から始まった。それを隠そうと奔走するわけだが、彼女が何に支えられて、ここまでやってこられたのかが、少しずつ分かってくる。と同時に、そういう彼女が、持前の強靱な精神力でどのようにこの危機を乗り越えるのかに、私の興味は移っていく。外部にたいして確固たる姿勢を保ち続けることが出来ても、こと家族の問題になると、それはやや甘く、揺るぎやすいものになってしまうのは、これは当然のことといってもいいだろう。その上、娘たちの反発にはあうし、溺愛している孫の母親の激しい抵抗に、突っ張ってみても、ついには屈してしまう。それはそうだろう。また、そうでなくては、人でなしになってしまう。
　いったい私は、ワッサに共感を覚えているのか、といえば、そんなことはない、と答えるだろう。でも、彼女の持つ崩しがたく見える意志も、実は脆いものであったことを知って、安心もしたのでした。